近況の最近のブログ記事

謹賀新年

明けましておめでとうございます。
涼元はといえば、今年は多忙につき里帰りせず、大阪某所の草庵に籠もっております。
元日に実家にいないのは、子供の頃親戚の家で年を越した時以来で、ちょっと不思議な感じです。

自作雑煮2012年ヴァージョン@大阪自宅にて

元旦は雑煮を食す。 それが日本人のジャスティス。
酒みりん醤油で煮飛ばして強く味付けした鶏もも肉、鰹と昆布で引いた出汁で炊いた半月切りの大根、十三の餅屋で買った丸餅、さっと茹でたちぢみほうれん草を乗せて、さらにイクラと花がつお。
実家の雑煮のアレンジ版なれど、味はかなりちがう。もうちょっと工夫できそう。

破魔矢

昼過ぎから、近所の氏神様に初詣に赴く。
今年は幸運が山のように必要なので、本式に参拝しようと鳥居の方を回ったら、参道どころか手前の路地から大行列。地元の神様の実力を見誤っていた。
参拝後のおみくじはお約束の大吉。曰く、『願望大に叶ふ』。破魔矢を授かり、美人の巫女さん手ずからの御神酒をいただき、ホクホク顔で帰宅。全行程1時間半。

喜久酔無濾過生原酒と海鮮珍味で正月飲み

そして現在、ささやかに新年を寿ぎ中。
近所のスーパーで買っておいた海鮮六宝に、いただきものの黒豆を加えて七福。子孫繁栄祈念成分が多めなのはスルーで。魚卵大好きだし。
酒は毎年この時期にしか手に入らない喜久酔無濾過生原酒しぼりたて。今年のはちょっと炭酸が弱くてコクが濃い…かな? 普通酒でも美味いものは美味い、と認識を新たにさせられる酒。

節句働きはロクなことにはならないので、今日のところはこのままゆるりと。
ではでは、今年もよろしくお願いします。

青木繁展と先斗町アトランティス

7月2日。
午後から阪急で京都へ。
河原町駅から地上に出たとたん、むっと重く湿った風に包まれた。
京都特有の空気と相まって、梅雨の谷底を泳いでいるよう。
鴨川沿いから祇園を抜けて、京都国立近代美術館まで歩いた。今年二度目の訪問。前回のパウル・クレー展の展示形態が性に合わなかったので、そのリベンジも兼ねて。
今回の目当ては青木繁展
二〇世紀初頭の日本画壇に颯爽と現れ、野心家の天才と呼ばれ、若くして夭逝した画家。
多くはない作品の中、見てみたかったのはふたつ。

まずは『わだつみのいろこの宮』。
入場した正面に誇らしげに飾ってあった。
第一印象、思っていたより大きい。
『整った絵』だと思った。
構図といい、色合いといい、人物といい、ディティールといい、雰囲気といい、抜群の完成度、素晴らしい出来であることは一目でわかる。
ただ…
綺麗なモデルさんに神話のワンシーンを演じてもらい、それを完璧に絵に落とし込んだ、という感じで、どこか印象が上滑りしていく。それでも惹きつけられるものはあるけれど、それはたぶん画家の技量や矜持や理想にであって……少なくとも、この絵そのものの『物語』や『世界』に魅力を感じているわけじゃないんだなあなどと思ってしまう。それでも30分ぐらいは見惚れてしまったのは事実。

そしてもうひとつの目当て、『海の幸』。
入ってすぐの展示室に、こちらも何の衒いもなく展示されていた。
最初の印象は、『わだつみのいろこの宮』と真逆。 つまり、「これ、こんなに小さかったのか……」
大きさは知っていたはずなのに、壁画のように大きな絵だと勝手に思っていた。
でも、描かれた主題は『大きな絵』と呼ぶにふさわしい。

巨大な鮫を肩に担いで、浜辺を誇らしげに行進していく、赤銅色に焼けた裸の漁師たち。 痩せた狼のような肉体、画面を斜めに分断する銛の穂先。
とにかく鮮烈。一度見たら二度と忘れないインパクト。
存分に見惚れまくってから、仔細を眺めだすと、おやっと思う。
どう見ても未完成。
絵の左半分と右半分でタッチが違う。漁師たちの顔も、きちんと描き込まれている者と、適当にぼやかしてある者のギャップが激しい。オマケに志村けんのバカ殿様みたいな、不自然に白くてひょっとこ顔の、あからさまに漁師じゃないのがいちばん目立つところに混じっていたりする。鮫も生物学的になんかヘンな気がする。
要はツッコミどころ満載。でも、この絵がちゃんと『完成』していたら、見る者にこれほどのインパクトをもたらしただろうか。
粗雑や遊びさえもがインパクトに、そして武器になっている。むう……

『わだつみのいろこの宮』と『海の幸』、どちらが『神話的』か? そう訊かれれば、全く迷いなく『海の幸』と答える。聖書とか日本書紀とかの、所詮人が造った神という創作を超越した、はだかの人間の営みが最初から持っている神性、確かにそれを感じられた。
結局、こちらも30分ほど立ちつくして眺めてしまった。
満足。
でも、主題そのもので完成度を凌駕できるという実例を目の当たりにした思いで、ちょっと複雑でもあった。

その後、常設展を一通り鑑賞して、美術館を辞す。
空には晴れ間も現れ、太陽が傾いたせいもあってか多少はすごしやすくなった。
いつも通り知恩院から円山公園、八坂、二寧坂、五条大橋と散策、満を持して先斗町に突入。
本日三つ目の本命、バーアトランティス

夏期は川床で洋酒が飲めるという、大変に希有なオーセンティックバー。
場所柄もあってか観光客が多く、正直ちょっとお高い店なれど、その分をちゃんと酒の味とホスピタリティにかけてくれている良い店。モルトも各種ありカクテルもなかなかレベルが高い。
勢いあまって開店3分前に着いてしまい、店の前でちょっと待ってから入店。若い店長さんに迎えていただく。せいぜい2ヶ月に1度程度、大阪からやってくる客のことをちゃんと覚えてくれていて、ちょっと嬉しい。
いちばん端の、鴨川に面した特等席に座り、まずは生ビールから。ピルスナーグラスに注がれたプレミアムモルツ、このロケーションで不味かろうはずもなく、2分で飲み干す。

ギネスとフィッシュアンドチップス@先斗町アトランティス

お次はギネスとフィッシュアンドチップス。二種類の魚とふっくらした衣でボリュームたっぷり。空きっ腹には嬉しい。鴨川名物等間隔カップル配置を眺めつつ、こっちはひたすら腹ごしらえとアルコール摂取に精を出す。河原を通っていく人の「あそこバーになってる!」という驚きの声が聞こえ、ちょっぴり優越感。まあ、俺の手柄じゃないけれど。

三杯目、いつもならいい感じに温まったギネスをチェイサーにモルトを頼むところ、今日はオリジナルカクテルの先斗町クーラーを所望。ほどよく甘めの炭酸が心地良い。

マスカットリキュールのトニック割り@先斗町アトランティス

さらにもう一杯、ボトルが目についたマスカットリキュールの飲み方を訊いたところ、リキュール自体の完成度が高いからということで、シンプルにトニックウォーターで割ってもらった。たっぷり絞ったレモンの効用か思ったほど甘くベタつかず、これも飲みやすい。

〆にモヒート、夏の屋外なら鉄板の味。
滞在1時間半で五杯、いい感じに出来上がった。
ここで会計してもらい、薄暮に賑わう先斗町通りを河原町駅までのんびりと歩いた。
海の画家である青木繁作品を愛でた後、アトランティスで飲むってのは、ちょっと出来過ぎだったなあと思いつつ。

なつは どこへ いった

9月4日、久々に自転車で遠出。
車でひしめく171号線の大変走りにくい路側帯を、えっちらおっちらJR山崎駅まで北上、コンビニで食料とスポーツ飲料を買い込んで一服、そこから折り返して淀川の河川敷に入った。
しばしのラフロードを楽しんでから、公園沿いの舗装路へ。

車も人も、他の自転車もない。
ひたすらに真っ直ぐな道、ただペダルを回す。
強すぎる陽射しに揺らいで、今がいつなのか、おぼろげになってくる。
ずっと彼方、今から旅立つ宇宙船団みたいに、最後の夏雲が群れになって浮かんでいる。

自転車でゆく淀川河川敷

自転車のトップチューブに汗が当たって、ようやく我を取り戻す。

枚方大橋下で、山崎駅前のデイリーヤマザキで買ったランチパックをかじりつつ休憩、そこからはペースを落としてのんびりと。
30分後、淀川から神崎川に入るのを忘れ、気がついたら西中島にいた。
おかげで走行距離が大幅に増え、帰り着いてでしめて63.9km。
さすがに後半は疲れたものの、まだ余裕がないことはない。
ブロックパターンのMTBで何の準備もなく100kmぐらい乗ってた若い頃には戻れそうにないけれど、装備に頼ればまだまだイケそうだと確信しつつ、ぬるい風呂にゆっくりと浸かり、冷やしツナトマトうどんをつくって食べた。氷でシメた麺がしみじみ美味い。そして食後は麦茶。
次は京都まで往復したいなあ。

タイトルは鈴木祥子の名曲より。
昨今の炎暑を鑑みるに、『秋はどこへ行った』とするべきだったかも。

根津美術館&サントリー美術館鑑賞

5月5日。
ゴールデンウィーク2度目の美術鑑賞。
今度のブツは花の都東京は根津美術館収蔵のアレ。

紅白梅図屏風見たさに毎年2月MOA美術館詣でをする光琳萌え野郎としては、前々から観たいと思っていた大物。なれど、何かというと補修してる上に、紅白梅図屏風と同様、その花が咲く季節にしか展示しないため、なかなか機会に恵まれなかった。

今回ようやく念願叶う。感無量。
あと、最近出不精が極まっている父を引っ張り出すのも目的のひとつ。

JR静岡駅。入線してきた700系のしゅっとした鼻面に、「新幹線ってのはこんな形だったか?」と怪訝そうな父を伴い、混み合う車中に腰を落ち着け……ようと思ったら、3列席の端が絵に描いたような外国人旅行者さんで、おニューの一眼レフデジカメ片手に大はしゃぎ中。生温かく見守りつつ(いいから座って落ち着け)、ものの1時間で品川へ。新幹線速い。

山手線で渋谷、銀座線で表参道下車、さらに徒歩5分で根津美術館着。思ったよりフツーに街中にあって拍子抜け。以前に来た印象から、もっと全体が緑に囲まれていると思っていた。

オシツオサレツっぽい生き物を模った入場券を2枚買って、シンプルな内装のロビーに入る。
端午の節句という最高の日取りもあり、当然ながらの混みよう。とりあえず展示室へ。
特にもったいぶるでもなく、いくつかの豪奢な屏風(これらも名品)を露払いとした先に、それはあった。

尾形光琳作『燕子花図屏風

一見の印象、「軽い」。
正確には、かろやかというべきか。
下地の金と、葉の緑と、花びらの紫、たったそれだけの構成。
主線がなく、いかにもすっと力を抜いて描かれているけれど、その実計算しつくされているのだと思う。ディティールが色に溶け込んでいるせいで、花も葉も風に揺られ、陽に揺らいでいるよう。印象派を何年先駆けてるんだと呆れるけれど、このしがらみから無縁な佇まいを前にしては、技法云々なんか野暮そのもの。頭がかちりと切り換わる。

燕子花が音符で、その並びが楽譜。
そう喩えるのはアリだけど、ありがち。
さらに踏み込み、奏でられる曲がどんな『音』なのか、できるだけ具体的に想像してみる。
ヴァイオリンでもない、ピアノでもない、琴でもない、リコーダー、チェンバロ……近いけど違う。ごく薄いガラスの筒、高く響く金属の鈴、もっともっと軽やかな音……メロディーはどうだろう? 雅楽、印象派、バロック、現代音楽……当て嵌めては首をひねり、より近い調べを探っていく。
これは楽しい。かなり愉しい。

たっぷりと20分ほど、自己流鑑賞を堪能した。
響きの余韻を楽しみながら、広い庭園を散策する。
中央の池にこれでもかと植わっているリアル燕子花を眺め(ベスト撮影ポイントは大行列)、併設の喫茶店ににべもなく振られ(こっちも行列)、結局また、燕子花図屏風の前に戻ってきた。
さっきよりさらに混んでいるけれど、折良く作品前の椅子が空いたので、ここぞと陣取り、さっきよりはもう少し穏やかに印象を焼きつける。

他の展示も充分に楽しみ、1時間半ほど後、根津美術館を辞した。
どんなに有名な作品でも、自分の目で見なければやっぱりダメだなあと再認識させられた。
もちろん大満足。

まだ日が高い。
となればここはハシゴだろう。
じわじわ汗をかきながら徒歩で青山霊園を突っ切る。「この辺にあんな建物あったか?」と、彼方に聳え立つ六本木ヒルズを見て怪訝そうな父を伴い、サントリー美術館へ。

こちらの出し物は、『和ガラス ―粋なうつわ、遊びのかたち―
17世紀からの和製ガラス製品を、芸術性や技法ではなくあくまで用途によって分類して見せるという趣向。いい感じ。

小洒落たグラス、徳利、鉢、小皿、エトセトラ。
骨董好きの涼元父は、最初からかぶりつき状態。
国宝燕子花図屏風に比べれば、たしかにぐっと身近&お手頃な感じ。もちろん買えないけど。
骨董にはあまり明るくない息子にしても、こんなのが普段使いできたらどんなにいいだろうと思うものあり。まあ、使ったら早晩割るけど。
フロアが替わると、装飾品がメインとなる。
溜息が出るように美しく繊細な細工物ばかり。金魚玉、風鈴、雛道具。
中でも細いガラス棒を竹ひご代わりにした虫籠がスゴい。
こんなの使えるのはどんな金持ちだか……というのもあるけど、何より無事に残ってるのが。壊れるって、絶対。リアルに割るとこ想像できちゃうし。

サントリー美術館を辞し、そろそろ空腹なれど田舎者にはあまりにオサレすぎる東京ミッドタウンでの一服を諦めて、六本木のテキトーな喫茶店でアイスコーヒーのみ腹に入れる。
それから秋葉原にて、火山灰をかいくぐって日本に帰ってきた涼元姉と合流。
見てきたばかりの美術品の印象を肴に、例によってヱビスビール。

大変充実した一日だった。色々な意味で。
父も疲れてるっぽいけど楽しんだ様子。つーか、息子に引っ張られるでもなく、たまには自力で遠出してください……などと言っていたら、「関西に住んでるのになぜ観に行かないっ!」とばかりに、松林図屏風を強力に薦められてしまった。

ううう、墓穴を掘ったかも。

5月3日の午後。
静鉄県立美術館前駅で降り、やっと初夏っぽくなってきた陽気の中を、エントランスの坂をだらだら登る。駐車場はほとんど満車らしい。連休ただ中とあって、ピクニック目当てを含めてかなりの混みっぷり。いつもこの辺りにいる野良猫連中も、稼ぎ時とばかりうろうろしている。

徒歩15分ほどで静岡県立美術館着。
今日の目当ては、樹花鳥獣図屏風
収蔵品とあって美術館的にも一押し、そこかしこにレプリカがあり、撮影も可能。ぞうさんととりさんがとっても可愛くキャッチーだし、記念撮影でも人気の様子。

樹花鳥獣図屏風のレプリカに見入る人々(気が早い)

そして本物は、展示中央あたりに鎮座していた。

「…なにこれ?」というのが最初の印象。
存在感からして特異。どの系列にも属さない、突然変異的な技法。たぶん日本最古のドッター。注文生産でこれをやったらクライアントに激怒されると思う。日本画というよりむしろ、アンリ・ルソーを連想してしまう。全体から『描いてて楽しかっただろうなあ』と伝わってくる。
『怪作』であると同時に『快作』。
個人的には、無難な風景画よりこういうのをたくさん買ってほしい>静岡県立美術館。

他にも、雄鶏が凛々しく雌鳥が優しくひよこがかわいい群鶏図もろもろとか、エロ根菜ストリップショー(殴)こと果蔬涅槃図とか、有名どころや大作が展示されていたし、自分ちに飾っておきたいような洒脱な小品もちらちらあったけど、結局樹花鳥獣図屏風の前で何度も立ち止まってしまった。印象強すぎ。

おおむね満足。
ただ、象鯨図屏風が前期展示だけで見られなかったのが心残り。
こちらは信楽のMIHO MUSEUM収蔵らしいので、機会があったら行ってみたいなあと。

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